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アイガー登山 (前編)

2015年06月26日

6月も下旬に差し掛かり、
今年のスイス・ユングフラウ地域は好天に恵まれ、
例年よりも雪解けが順調に進んでいます。登山シーズンの到来です。
すでにメンヒなど比較的登りやすい山の登山が始まっており、
来月にはついにアイガー登山がスタートすることでしょう。

今回は一昨年8月、
アイガー東山稜に登った際の貴重な記録を振り返りながら、
登山の魅力とともにお届けします。

ちなみに今年の好天とは対照的に、
昨年は春から夏にかけてユングフラウ地域が観測史上最悪の天候に見舞われました。
その影響で、アイガー東山稜にある山小屋「ミッテルレギ小屋」が
一度も公式オープンしない夏となり、多くの登山者が計画を断念しました。
そのため、この記録は、現在のところ公式ガイド付きで登れた最後のシーズンの写真となります。

グリンデルワルトからクライネシャイデックへ

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登山の旅は、美しい山岳リゾート地グリンデルワルトからスタートします。
まずは電車に乗り、クライネシャイデックへ向かいます。
車窓からは、これから目指すアイガーの荘厳な山頂が顔を覗かせています。
その姿を見ると、自然と気持ちが高まり、冒険への期待感が膨らみます。

 

IMG_5909クライネシャイデックからは開業100年以上を誇るユングフラウ鉄道へ乗り換えます!

 

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この鉄道は、山岳観光の象徴ともいえる存在で、
車内ではスイス人登山家ウエリ・シュテックがアイガー北壁を
わずか2時間47分で登頂した際の映像が流れています。
彼の挑戦を映像で目にすると、尊敬の念を通り越して畏怖の念さえもが湧いてきます。

 

アイスメーア駅から登山開始

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ユングフラウ鉄道で二つ目の中間駅「アイスメーア」に到着。
ここからいよいよ登山が始まります。
駅構内の観光用窓からもアイガー東山稜と本日の目的地である「ミッテルレギ小屋」が見えています。

 

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アイガー東山稜は、1921年に日本人登山家・槇有恒氏が世界で初めて登頂した歴史あるルートです。その途中にあるミッテルレギ小屋も、彼の寄付によって建てられたという日本との深い関わりを持つ場所です。グリンデルワルトからも見える、この稜線を見上げるたびに日本人として誇らしい気持ちになります。

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よく見ると既に先行パーティーが何組か小屋へ向かっている様です。

氷河帯を抜け、クライミングへ

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この駅の端っこになんと外へと通じる扉があります。
通常観光客はこの先は行けません。
もちろん今回はここを通り抜けて行きます。

 

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トンネルの中は非常に暗く、かなり急な下り坂になっていますが、
所々足下が凍っており、意外にもここで既に危険を感じるほどです。

 

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100mほど歩いてようやく出口へ。
外がとても明るく見えます。

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外に出てまずは氷河帯へ乗り移るのですが、
氷河と山肌の間にはベルグシュルンドと呼ばれる大きな口が開いていて、
大きくジャンプしなければ渡れませんでした。

 

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フィーシャー氷河の上に出て後ろを見返すと、
さっきまでいたアイスメーア駅の窓が見えます。
仕事では何百回も来ているところですが、初めてここから外に出ました。
日常の観光では決して味わえない特別感を感じます。

 

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ゆっくりと写真を撮っていたかったのですが、
ここは南壁の直下で日当たりも良いため、雪崩や落石も多く、
意外にもここでの事故も多いため、一刻も早くここを抜けなければなりません。

 

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氷河の上ということで途中でクレバスを越えることもあります。
先行者が通過しても問題ないスノーブリッジも自分の時に落ちるかも知れません。
ほどよい緊張感です。

 

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たまに振り返っては、アイスメーアの窓を見てしまいます。

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後続のグループも迫ってきているようです。
よく見ると上部から落ちてきたデブリがあちらこちらに。

 

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ある程度進むとまた氷河からアイガーに乗り移ります。
乗り移ってからしばらくは壁が湿っていて登りづらいですが、
かなり斜度もあり、しっかりとクライミングを楽しめます。

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アイスメーアを出発して1時間40分ほどで、
本日の目的地ミッテルレギ小屋が見えてきました。

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3350mのミッテルレギ小屋到着!!
よくアイスメーアから見ていると非常に小さなものだと思っていましたが、
意外と大きくてビックリ。もちろんこんな稜線の細い部分に立てられている事にはもっとビックリ!!

ミッテルレギ小屋での滞在

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小屋の下にはシェルターのようなものもあり、
ここにも寝泊まりすることが出来ます。

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中はこのような感じで、小屋の中には36のベッドがありますが、
ダイニングスペースの上(奥のハシゴで上がる)にも20弱の布団があり、
さらに外のシェルターにも最大15名ほど泊まることが出来るそうです。

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小屋の中には我らが槇氏の初登頂記念プレートが埋め込まれています。

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小屋を管理しているのはこのおじいさんただ一人!
もちろん当日宿泊中の地元の山岳ガイドさんも食事などの準備を手伝います。

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こんな山の上でも3コースでスープ・メイン・デザートが出てくるのはさすがヨーロッパです。

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食事が終わるとガイドさん達が情報交換をしています。
クライアントの足前や経験を考慮しつつ地元ガイドが明日の出発順などを決めていました。

そうこうしていると、みんながザワザワと外へ出てきます。
雲海に沈む夕日です!!

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自然の美しさを感じると共に、少し恐怖も感じました。

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ちなみにこの時点で気温はマイナスになっており、
みんな陽を求めて壁際に並んで夕日を見ていました。

 

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山に登ってみる景色は、登山者だけにしか味わえないという優越感からなのか、
それとも素直に貴重な景色を見ているからなのか、見ているだけで不思議な気持ちにさせてくれます。

安っぽい言葉ですが、本当に感動しました。
この景色を見ただけで、ここに来た甲斐があったと心から思いました。

実はこの日は満月でした。
この後は本当は明日に備えて寝なければならないのに、
月明かりに映し出されたアイガーをはじめとする山々が綺麗すぎて、
何と一睡もせずに景色を眺めてしまいました!!苦笑

その夜景と登山の様子は次回の後編へ。

 

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